食品照射ネットワークは米国政府に下のような表示をやめないようにという手紙を出しました。送った英文は英語バージョンに全文掲載してあります。
FDAでは今回「食品の生産・加工および取扱いにおける照射」について、アメリカ市民からの意見提出を呼びかけておりますが、ここに海外からの意見も考慮に入れて頂けたなら幸いです。これは、日本における法規制のいかんに関わらず、こうした食品が輸入されてしまう危険性があると考えられるためであり、また、アメリカ政府によるこうした動きが、国際的な貿易協定などを通して、日本の輸入規制などに影響をもたらす可能性があると考えられるためです。私たちは照射食品に反対しており、その安全性に疑問を持っています。健康への影響などを考え、これを食べることは避けたいと考えていますし、また周辺環境への影響などを考え、照射施設の建設にも反対しています。現在日本では、法律で食品照射を禁止しており、その輸入も認めていません(ジャガイモを除く)。照射食品の安全性が科学的に証明されていないため、このように法律で規制しているのです。
1972年に日本で照射ジャガイモが認可されたとき、消費者は反対運動を起こしました。私たちは科学的根拠(以下参照)に基づき、照射食品は危険であると考えており、照射を即刻止めるよう、そしてこれ以上の食品照射を許可せぬよう、運動を続けてきました。
日本で現行の法律を変え新たな照射食品を認可するためには、該当照射食品の安全性が科学的に証明されなければなりません。しかし、科学技術庁に提出されていた照射食品の実験データは、そこに危険性がある可能性を示していました。国立衛生試験所が行なった照射ジャガイモと照射タマネギに関する実験データには、以下のようなデータが含まれています:
※照射ジャガイモ投与でラットの体重増加率が抑制
※照射ジャガイモ投与でラットの死亡率増加
※ラットの卵巣量が、150 Gy
(グレイ)照射ジャガイモ投与群で増加、300 Gy と600 Gy照射ジャガイモ投与群で減少(理由不明)
※照射タマネギ投与の雄ラットで死亡率が有意に増加
※300 Gy 照射タマネギを餌に 4%混ぜて投与したddcマウスの三代目マウスに骨奇形が高率で発生、また卵巣と睾丸の重量が減少
※150 Gy 照射したタマネギを餌に 2%混ぜて与えたddcマウスの二代目、三代目マウスに頚肋(首の骨にあばら骨が付いている奇形)の発生
照射食品の毒性はこれらのデータから明らかです。(これらのデータは照射ジャガイモの認可後公開された。ジャガイモ認可後、照射食品の認可申請の際に遺伝毒性実験データの提出が追加して義務付けられるようになり、その結果、実際に遺伝的に安全性を証明できた食品はなく、ジャガイモ以降照射が許可された食品はない。認可後公開された上記のジャガイモの実験データには遺伝毒性の可能性が示されていたが、一旦認可された照射ジャガイモの認可再検討などはその後行われず、照射ジャガイモは今だに許可されたままである。)
また、これらのデータは1977年のWHO(世界保健機構)/FAO(食料農業機構)/IAEA(国際原子力機関)のジュネーヴ会議でも報告されています。しかしこの会議では、このデータで示された有意な変化には、組織病理学的(顕微鏡による観察)な問題はなく、従ってこれは人間の健康に重大な影響を及ぼすものではない、と結論づけました。
しかし、組織病理学的観察はそれだけで安全性を証明できるものではないため、このWHOの結論には疑問が残ります。卵巣や睾丸の重量減少は、そこになんらかの異常があることを示しています。もし組織病理学上異常がない(顕微鏡で覗いて見て、細胞の形態に異常がない)とするならば、重量が減少するためには細胞数の減少があるはずです。それに、生殖実験では異常が示されているのです。
アメリカの研究機関等では照射食品の安全性に関し、日本と異なった研究データやその解釈または意見等を持たれている可能性があります。確かに、これが米国内のみにおける問題ならば、私たちは貴国の決定にあえて介入するものではありません。私たちはもちろん、日本政府が法律を厳守し、我国での照射食品の輸入を規制し続けることを希望しています。しかし一方で、照射の有無を示す表示が義務づけられなくなった場合、知らずに、あるいは不法に、こうした食品が輸出入されてしまう危険性が大きいことも、認識しています。現在のところ、照射食品を見分ける手法は確立されておらず、現代社会におけるような複雑な流通経路を経て消費者までたどり着く食品においては、表示がなければその判別は不可能です。また、食品が不法に輸出される可能性もあります。そうした場合、明確な表示がなければ、我々輸入国側の消費者はこれを判別することができません。
私たちは、貿易等において国家間で活発に取り交わされる協議やその微妙な力関係などの影響の存在も認識しています。そして、アメリカが自国内での食品照射の認可を楯に(安全性は確認されている、として)、「輸入障壁」となっている日本の法規制を撤廃し、照射食品の輸入を解禁するよう日本政府に圧力をかけてくるのではないか、と懸念しています。
照射食品が不法に我国に輸入されたり、また日本政府が将来法改正を行い照射食品受け入れに転じた場合などには、私たち日本の消費者は最低限、そうした処置を施された食品であることを知る権利があり、その上で自ら食品を選択する権利があります。私たちはこのような食品を食べること、そして購入することを避けたいと思います。
一方で、日本国民のほとんどが食品照射について何も知らないこと、また1974年以来照射ジャガイモが一般市場に出回っているにもかかわらず、これに関しても全く無知なままでいること、なども事実です。しかし、こうした事実を知る機会が与えられたならば、そしてとりわけ上述のような異常を示す実験データ等が明示されたならば、日本の消費者は照射食品の購入を拒否するだろう、と私たちは考えています。日本の消費者はアメリカからの輸入食品をボイコットするでしょう。
以上の理由から、私たちはFDAに現行の表示規定を保持すること、そしてすべての照射食品への明確な表示義務を永続的に続けることを強く要請します。そして更に、健康および環境への影響を考慮し、食品照射そのものを全面的に禁止するよう要請いたします。1968年にFDAが米国陸軍におけるハムやベーコンへの照射を禁じたように…。
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