「放射線等に関する副読本」の「照射ジャガイモ」部分等の訂正の申し入れ

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2011年11月24日
文部科学省大臣
中川正春 様

照射食品反対連絡会
代表世話人和田 正江(主婦連合会)
飛田 恵理子(東京都地域婦人団体連盟)
富山 洋子(日本消費者連盟)
里見 宏 (食品照射ネットワーク)


「放射線等に関する副読本」の「照射ジャガイモ」部分等の訂正の申し入れ


照射ジャガイモについて
 文部科学省の「放射線等に関する副読本」の中学生用7ページ、高校生用の5ページに「放射線照射ジャガイモ」が「色々な分野で放射線が利用されていることを学ぶ」例として使われている。

「照射ジャガイモ」を含め放射線を照射した食品中にはこれまでになかった物質が出来ることがわかっている。特に「アルキルシクロブタノン」は遺伝毒性と発ガン性を持つことが報告され問題となっている。  厚生労働省は3千万円をかけ照射食品の調査を行い、昨年5月、薬事・食品衛生審議会食品規格部会で「アルキルシクロブタノン類の毒性(特に、遺伝毒性、発がんプロモーション作用)」、「照射食品中のアルキルシクロブタノン類の生成量及びその推定暴露量」等に関する安全性データがないと結論している(2010年5月18日)。
 もともと日本の食品衛生法は食品への放射線照射を禁じていることや、照射により毒性物質ができることなどを隠したまま、子どもたちに放射線が有効利用されている例として照射ジャガイモを教材としていることは大きな問題である。
 過去に文部省は北海道士幌農協の照射ジャガイモを日本学校給食会を通じて全国の学校給食にまわし、多くの保護者から抗議され取り扱いを止めた経緯がある。こうした教訓を忘れ、照射ジャガイモを放射線の安全の根拠であるかのような例とし使っている副読本は直ちに訂正されたい。  また「照射ジャガイモ」だけでなく「医療放射線」を利用しているが、これは公平性を欠き子どもたちに間違った考え方を教え込む非常に危険な副読本である。

放射線と健康について
 この副読本は放射線と健康について「100ミリシーベルト(mSv)以下の低い放射線量を受けることでがんなどの病気になるかどうかについては明確な証拠はみられていません」としている。これは放射線影響研究所の報告(No24-02)でヒロシマ・ナガサキの被爆者の追跡調査でも35ミリシーベルトでガンが増えているという科学的事実を無視したものであり、国民を欺くものと言わざるを得ない。事実に基づいて訂正するよう申し入れる。

放射線の遺伝子への毒性について
 放射線の危険をガンのだけで説明し、遺伝子への害作用についてふれていないのは問題である。日本は、医薬品(薬事法)、食品添加物(食品衛生法)、農薬(農薬取締法)、新規化学物質(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)および労働環境検査(労働安全衛生法)で変異原性試験が求められている。主要な物質については変異原性試験と併せて遺伝毒性や生殖毒性の評価も行われる。こうした状況をあえて無視した副読本になっていることが問題である。

自然放射線と福島原発事故の放射線の違いについて
 自然界にある放射性物質により福島原発事故の放射性物質の安全を援用しているが、カリウム40など自然界の放射性物質は原発事故でばら撒かれた放射性物質と違い、宇宙誕生の時間をかけた風化で原子が個々バラバラになっている。副読本にあるスイセンの写真のように放射性物質は植物全体に広がっているため、遺伝子への影響が弱く、分子切断の場所がほとんど相互作用しないとされる。しかし、福島原発から出た  放射性物質は巨大な放射性物質の固まりで体内に入ったら、集中的にα線やγ線を出し遺伝子毒性を示す。副読本はこの事実を知りながら情報を提供していない。
 元東京大学の鵜飼保雄教授は「自然突然変異と放射線などによって誘発される人為突然変異とは質的に同じであるとよく書かれているが、それは正確でない。自然突然変異と人為突然変異は遺伝的に異なる。人為突然変異がもっぱら遺伝的に優性から劣性の方向に起こるのに対して、自然突然変異は優性から劣性にだけでなく、劣性から優性へ生じることも多い。これは自然突然変異と人為突然変異は生じるメカニズムが異なるためである。かって自然突然変異は、人為突然変異と同様に、自然界にある放射線、つまり宇宙線や地表からの放射線によって生じると考えられたことがあったが、現在では自然放射線だけでは自然突然変異の10パーセントしか説明できないことがわかっている。最近では、自然突然変異は細胞内で染色体間を渡り歩くDNAであるトランスポゾンによって主に生じるという説が有力である」 と指摘している。こうした多くの事実を隠した副読本は教育の根幹を揺るがすものである。

申し入れ
副読本を再チェックするとともに

下記のことにつき申し入れる
1.照射ジャガイモは照射により危険な物質が生成されることを明記するか、例として外す。
2.放射性物質の害作用として遺伝子との関係について追加すること。
3.100ミリシーベルト以下でも危険を示すデータがあることを明記すること。
4.自然放射線と福島の原発事故で放出された放射性物質について、放射性物質の作用メカニズムに違いがあり、放射性物質の毒性が違うことを明確に記載すること。

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