照射食品の調査・研究についての申し入れ

2007年7月27日

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食品安全委員会委員長
見上 彪 殿


照射食品反対連絡会
参加団体名(別添資料)

 

原子力委員会「食品への放射線照射について」の申し入れについて


 06年10月、原子力委員会は「食品への放射線照射について」をまとめ、スパイス及び一般食品への放射線照射を解禁するように厚生労働省、農林水産省、文部科学省に通知いたしました。
私たちは原子力委員会の食品照射専門部会の審議を傍聴し、審議資料も検討してまいりました。
今回の「まとめ」は下記のような問題を抱えており(資料1)、私たちはこれまでの問題も含め放射線を食物及び家畜飼料などに使うことに反対する結論にいたりました。(資料2)

 食品への放射線照射により、食物の成分が変化し、毒性を示す報告があること。また、ほとんどの食品が照射により質が落ちること(資料3)。もし食品に照射されれば、子どもから病人まであらゆる人が食べざるをえなくなること。生命の維持に欠かせない食品にこのような放射線照射をすべきでないと考えます。
原子力委員会は原子力政策のために食品にまで放射線照射を拡大する考え方を基本的に持っていますがこれは社会的ニーズを見誤った結果と考えます。

 今回の原子力委員会のまとめは「有用性が認められる食品への照射については食品安全行政の観点からの妥当性を判断するために、食品衛生法および食品安全基本法に基づく検討・評価が進められることが適切と考えられる」としていますが、有用性が認められるのは一部の輸入業者と原子力産業と原子力委員会の政策上の有用性であって、国民全体にあてはめることができるものではありません。
特に多くの消費者に照射食品は有用性も必要性も、そして緊急性も認められません。私たちは今回の原子力委員会の「食品への放射線照射について」は検討に値しないものと結論いたしました。この報告書を吟味され放射線照射食品を認めないように申し入れます。


資料1 「食品への放射線照射について」の問題点

1.審議資料は二次データが多く、また偏りが見られる。
 報告書「食品への放射線照射について」のp3からの第2章で日本の照射馬鈴薯について「現在、8千トン程度が照射されて出荷されている」旨の記載があるが、実際には腐りなどのため、商品価値のある馬鈴薯の出荷量は半分程度とされている(農林水産省談話)。
また、諸外国での流通量については記載があるが、保阪展人衆院議員の質問主意書で、諸外国での販売量を質問されても「承知していない」(答弁書 内閣衆質164第346号)という回答である。
こうした日本での流通量も正確に調べておらず、世界の実態調査もせず「各国で実績がある」と推定して照射食品を推進することは間違いです。

2.1万グレイまでの照射を安全とするためデータの検討をしない怠慢
 報告書p.3に「ばれいしょについて、健全性に影響ないとの結果を踏まえて、1972年に食品衛生法に基づく許可がなされ、1974年にはわが国で実用化された」と記載。
しかし、この報告書は馬鈴薯への上限線量が150グレイとされていることを記載していない。厚生省で照射馬鈴薯が審議された報告書には次のように記載されている。
「照射馬鈴薯によると考えられる所見としてラットの3万ラド(300グレイ)及び6万ラド(600グレイ)の照射馬鈴薯添加資料を与えた雌の体重増加の割合が少なく、6万ラドの照射馬鈴薯添加資料を与えた雌の卵巣重量に変化が認められた。これが照射馬鈴薯摂取によると考えられる所見である。」(放射線照射による馬鈴薯の発芽防止に関する研究成果報告書)と1万グレイ以下の300グレイ(3万ラド),600グレイ(6万ラド)で異常を報告している。

3.内部評価に代表性はない。
 報告書p.21「わが国の原子力特定総合研究」で慢性毒性、遺伝毒性実験などが行われ、「影響は認められない」と記載しているが、原子力特定総合研究で行われた7品目(馬鈴薯、タマネギ、米、小麦、ウインナーソーセージ、水産練り製品、みかん)のうち、厚生省の食品衛生調査会で審議されたものは馬鈴薯だけであり、他の食品については公的に検討・審議されたことはない。また、馬鈴薯については上記のように300グレイ、600グレイで異常が報告されている。

4.照射タマネギに関する虚偽記載
 今回、タマネギはスパイスとして照射の要請がされていが、報告書p.25に「照射タマネギの慢性毒性試験と世代試験」に「各群共通に骨の変異の一種である頸肋が認められたが、照射の影響によると考えられる異常は認められなかった。」と記載している。
問題は「各群共通」としている頸肋が非照射タマネギ群は73匹中14匹(19.2%)、照射タマネギ群は153匹中64匹(41.2%)と2倍の出現があり統計的にも有意な差がある。

5.科学的根拠に基づいた検討がされていない
 報告書p.26では、照射による新しい物質の生成について「シクロブタノン類の生成」と「シクロブタノン類の発ガン促進作用」に「放射線特有の生成物として、中性脂肪の放射線分解物で2‐アルキルシクロブタノン類が生成するが、このうち、2‐ドデシルシクロブタノンはDNAに障害を起こしたというDelinceeらの報告(1998,1999)がある。
しかしながら、WHOの見解(2003)では、長期間の動物実験とエームス試験が陰性という結果を含む、現時点での科学的根拠に基づくと、2‐ドデシルシクロブタノンなどの2‐アルキルシクロブタノン類は、消費者の健康に危険をもたらすようには見えないとされた。(中略)WHOはこの見解を結ぶにあたり、この化合物の毒性/発がん性について残された不確定要素の解明のための研究を実施することを引き続き奨励していくこととしている。」と記している。
ラットと人の結腸細胞でDNA切断というダメージ(コメットアッセイ法)を引き起こし、細胞毒性(トリパンブルー活性試験)も示したということについて、この重要な問題が日本において追試実験もされず、アメリカのラルテック社の実験やWHOの「消費者の健康に危険をもたらすようには見えない」という引用では、消費者に安全と納得させることはできない。

6.追試がされないと安全は証明できない。
 同じく報告書p.26、「シクロブタノン類の発ガン促進作用」で「発がん物質アゾキシメタンを投与、(中略)6ヵ月後に2‐アルキルシクロブタノン投与群で腫瘍数および腫瘍サイズの増大が認められ、発がん促進作用活性のあることが確認されている。
しかしながら、米国の食品医薬品庁は(中略)人の暴露量とされる値よりも3けた多いことなどから、2‐アルキルシクロブタノン類の摂取ががんを促進すると信ずるに足る理由を示す実質的な情報や信頼できる情報がないとしている。」と記している。
動物実験で異常がない量を求め、その量の100分の1から200分の1を人間の許容量としてきたのを考えると、3桁というのは安全を考える上から重要な意味がある。こうした新しい事実を、なんら根拠になるデータのない伝聞で打ち消そうとする報告書は非科学的な報告書と言わざるを得ない。(注:アゾキシメタン6匹中4匹に1個ずつの癌、2‐テトラデシルシクロブタノンは6匹中5匹に14箇所の癌、2‐テトラデセニルシクロブタノンは6匹中4匹に13箇所の癌。飲料水に0.005%添加)

7.国際機関の援用で国の決定をせまるのは誤り
 報告書p.4に、1980年に、FAO、WHO、及びIAEAの合同会議は「いかなる種類の食品でも、総平均線量が10kGy(100万ラド)以下で照射された食品には毒性学的な危険性は全く認められない」と結論した。1997年、これを基にコーデックス委員会が10kGyを採択した。
この10kGyが安全というWHOの報告書には根拠データがない。
日本の馬鈴薯やタマネギでの異常が出た実験結果は1977年に発行されたFAO,IAEA,WHOの合同専門家会議のモノグラフで、馬鈴薯については「長期研究で、卵巣の大きさに統計的に有意な変化が見られたが、組織病理学的な異常所見は見られなかった。 さらに、マウスおよびラットを使った広範にわたる生殖研究でも、加熱調理した照射ジャガイモの摂取を原因とする異常は見られず、潜在的な変異原性を示すデータも得られなかった。(WHOモノグラフp.27)」と毒性を否定する形でまとめられた。
3分の1に及ぶ重量の減少があり、組織学的に細胞に異常がなければ細胞数の減少と考えざるを得ない問題である。
また、タマネギに関しても「生殖研究で照射タマネギをマウスに与えると、卵巣および睾丸の重さに統計的に有意な変化が見られたが、組織病理学的な異常所見や生殖への悪影響は見られなかった。
従って、これら器官の重量の変化は人間の健康に重大な影響を与えるとは見なされなかった。
ただし、今後行われるラットを使った長期研究では、卵巣および睾丸の変化に特に注意する必要がある。マウスの生殖研究でF3世代に肋軟骨の融合が見られたが、コントロール群の数が少なすぎ、また実験に使われた特定のマウスの種でこの現象が自然に発生する率について十分な情報が得られなかったことから、有意と見なされなかった。
繰り返し行われた実験では、3世代いずれでも、このような異常は見られなかった。毒性データでは、照射タマネギの摂取による健康への悪影響は示されていない。(WHOモノグラフp.29)」と事実と違う、虚偽と思われる報告がなされていた。1980年の専門家会議の10kGyまでの照射を認めるための重大な伏線になっており、この問題は重大である。この会議に出席した日本の担当者の責任は重い。
また、1977年の報告書には「今後の課題」として照射のためにできる新しい生成物の毒性を調べるようにとしているが、1980年にはこれを無視する形で安全という結論が導かれている。これら科学的な問題指摘を放置したため、2ードデシルシクロブタノンなど新しい問題を現在抱えることになっている。こうした問題に科学的に答えることが国民への責任でもあるが、原子力委員会は独自の実験もすることなく、他国の評価で都合の良いものを援用するだけである。これでは国民の信頼を得られるものではない。

8.検知法がない、線量規定は無意味
 報告書p.29に「わが国の検知技術の現状」に関する記載がある。「わが国の行政検査に用いる公定検知法として実用化されたいまだ存在せず、その開発が急がれる」と記している。
どれだけの放射線が照射されたかを調べる方法はない。照射食品は過重照射や二重・三重照射される危険があり、これを調べられる検知法が必要である。これは照射食品が許可になる、ならないと関係なく開発される必要がある。

問題点の一部を記述しましたが、こうした非合理的で整合性のない内容で導き出された、第6章の「まとめ」は採用されるべきでないと私たちは考えております。
厚生労働省としては原子力委員会の働きかけに論理的に対応していただくよう申し入れます。


資料2 消費者が反対する理由

1.放射線照射を食べたいという消費者はいません。
食品製造業者も「安全・安心」を求める消費者の意向を十分理解しております。現にスパイス大手2社も照射スパイスが認められても使うかどうか「判断できない」と私たちのアンケートに回答しております。

2.照射食品の安全性は確立されていない。
(1)放射線の照射により食品中にできる放射線分解生成物の中には、毒性のあるものがあるし、未知の毒性をもつ物質が生成される可能性もある。  最近になって(1998年)、ドイツのカールスルーエ連邦栄養研究センターは、照射により2ードデシルシクロブタノンができることをつきとめ、それをラットに与えたところ、細胞内の遺伝子(DNA)を傷つけるという報告を出した。今後、仮に研究が進めば、毒性を示すものがさらに確認されるおそれがある。
(2)照射食品を与えた動物試験で、安全性に疑問のある問題がある。日本で1967年から行われた照射ジャガイモ・タマネギをねずみに食べさせた実験では、卵巣の重量低下、死亡率の増加、頸肋という奇形の発生などが確認された。生殖など生命活動に重要なところに影響が及ぶおそれを否定することはできない。
(3)試験研究の不十分性

 一般の研究者が実験用照射サンプルを入手したくても、公平に入手する手続き、方法がない。また照射食品の研究費と照射サンプルが抱き合わせで渡されるという方法で、公募などのオープンな形式がとられていない。照射食品の危険性確認に焦点をあてた試験研究がほとんど行われていないのが現状である。

3.照射により、ビタミンや葉酸など栄養素が破壊される。
パーオキサイドや二分脊椎と関係する葉酸と照射の影響などを調べることになっているがやられていない。

4.微生物学的な問題が科学的に調べられていない。
(1)照射の線量により、一定程度の微生物等が死滅するが、生き残る菌もある。また、放射線に強い菌ができるおそれがある。カビおよびマイコトキシンについてもまだ研究が十分でない。
(2)すでに生じた毒素やかび毒は、照射によってなくならない。

5.実用的な検知法がない。
 その食品が照射されているかどうか、どのくらいの照射線量か、照射回数を検査する実用的な方法がない。このことは、すでに違法照射食品を見逃すことになっている。また、中国やブラジルなどからの違法照射食品の発見もできない。

6.悪用・乱用が起きやすくなる。
 不衛生なものをその製造過程で改善するのでなく、照射による殺菌でごまかす不適切な使用がたやすく行える。照射ベビーフード事件(1978)をはじめ、イギリスでは、細菌に汚染されたエビをオランダの照射施設で殺菌して輸入検疫をパスした事件などが起きている。また、日本でもホッキ貝やサケに違法照射された事件があり、照射は悪用・乱用しやすいことが問題である。

7.照射されてもみかけは生のように見えることで消費者を欺く。
 照射食品は、煮たり焼いたりした食品よりも大きな変化を受けているのに、みかけは生のようにみえないことをメリットと推進派は言うが、消費者には偽和食品であり、重大な問題である。

8.放射能事故が起きる可能性が増える。
照射施設ではコバルト60など放射性同位元素を取り扱うため、稼動時、輸送時の紛失や盗難などの事故や、作業者などが被曝する事故の可能性が増える。

9.使用済み放射性物質をはじめ、施設に利用した放射能で汚染された物質など、放射性廃棄物の処理が問題となる。

10.照射食品は食中毒予防になるというが、照射食品は食中毒予防になったという根拠データはない。

11.照射食品は飢えをなくすというが、これは机上の空論である。

以上のように、食品照射は、照射食品の安全性に疑問があり、実用的な検知法もなく、管理も不可能であることは明らかです。人々の生命・健康に直結し、そしてまた、環境にも影響を及ぼす食品の取り扱いに、放射線を利用しようという発想それ自体が問われます。多くの照射食品が照射臭により使い物にならないことも食べ物に使うべきではないことを象徴しているかのようです。私たちは、これ以上、食品照射の実用化のために多額の税金を使うことにも反対します。食品照射の指定をしないよう申し入れます。


資料3 照射食品の質について(食品照射研究運営会議7品目の研究成果報告書より)

 原子力委員会報告書p.27に「定められた線量を超えて照射すると、食品(肉類や食鳥肉など)によってはにおい(照射臭)が発生したり、脂質の酸化により食味が低下することがある」「食品に放射線を照射すると、米については、供試した品種によっては食味に変化が現れるものがあり、また、小麦については、製めん適正の低下が認められた」(p.27)と記してあるそこで、米、小麦以外の5品目も研究成果報告書で点検した。その結果、照射による変化(照射臭、褐変、腐敗など)は芽止めのような低線量でも起きており、菌やカビのような高線量はより大きな変化が報告されている。この変化は定められた線量以下でも起きており、製品となったときに消費者のニーズに大きく影響すると考えられる。また、二次汚染による腐敗の危険や変色等を防ぐために冷蔵保存がよいとされるが、照射と冷蔵貯蔵という2重の処理は食品製造メーカーに大きな負担になろう。最近は冷凍した上で照射をすることが勧められているが、冷凍、照射、冷蔵という3重の処理となりコストにはねかえると考えられる。

コメ(ササシグレ、コシヒカリ、コシジワセ、キンマゼ、農林18号、ハツユキ)
「うまい米を代表する「ささしぐれ」は、照射直後には香り味などで、若干スコアの低下があったが顕著な差はなかった。3ヶ月貯蔵後では30krad区(300グレイ)の香り以外は有意差が見られなかった。6ヵ月後では30krad照射区で硬さの劣化が認められた以外は大差なく逆に香り、味では一部照射したものの方が高いスコアを示した。うまくない米とされる「はつゆき」もほぼ同じ傾向を示し3ヶ月貯蔵後で認められた品質劣化が6ヶ月貯蔵後はほぼ検知されなくなっている。」「低線量照射でも照射直後には官能評価が低下した」と記されている。(照射量 10krad(100グレイ)、15krad、20krad、25krad、30krad)」

コムギ(カナダ産マニトバ2号と農林61号)
「照射小麦から作ったパンの香りについて図4−5示した。照射直後では20krad(200グレイ)でも異臭が生成しており、線量と共に香り、総合点とも低下している。しかし、照射小麦を3ヶ月貯蔵した後では、このオフフレーバーはかなり軽減している」麺について「内麦は照射直後の試料では照射の影響がそれ程大きくないが、3ヶ月貯蔵後では照射による評点の低下が全般的に現れてくる。一方外麦では照射直後でも3ヵ月後でも照射の影響がかなり認められ、外麦の方が放射線感受性の高いことが示された。この官能検査による硬さの低下は、めんの物性値の測定結果と完全に一致している。」「以上の結果、ゆでめんの食味(特にテクスチャー)が照射の影響を受けやすいことがわかった。」

タマネギ(札幌黄、泉州黄)
「発芽防止のためには、休眠期間中なら3krad(30グレイ)、また、休眠覚醒期の初期で内芽の伸長が2−3cm程度以内なら、7−15krad (70−150グレイ)で目的を達することができる。」
「照射タマネギの唯一の欠点は、実用的には問題ないとはいえ貯蔵中に内芽が枯死し、褐変することである。内芽の褐変を防止するには3−5度の低温に貯蔵することで、こうすれば少なくとも8ヶ月は変化しない。出庫しても常温で1ヶ月くらいの流通期間ならば内芽には何ら変化なく、商品価値を維持できる。」

収穫後28日照射試料の発芽率及び腐敗率(室温貯蔵 %)
  収穫後の日数
28 63 83 124 185 242
非照射 発芽率 0 0 6.5 23.0 67.0 86.0
腐敗率 0 0 7.0 8.0 8.5 8.5
3krad 発芽率 0 0 0.5 0.5 0.5 0.5
腐敗率 0 0 5.0 12.0 13.5 24.5
7krad 発芽率 0 0 0 0 0 0
腐敗率 0 0 0.5 12.0 14.0 24.0
15krad 発芽率 0 0 1.0 1.0 1.0 1.0
腐敗率 0 0 4.0 12.0 18.0 26.0
収穫後28日照射試料の発芽率及び腐敗率(5℃貯蔵 %)
  収穫後の日数
28 63 83 124 185 242
非照射 発芽率 0 0 0 0 5.0 23.0
腐敗率 0 0 0 3.0 8.0 8.0
3krad 発芽率 0 0 0 0 1.0 5.0
腐敗率 0 0 0 6.0 11.0 17.0
7krad 発芽率 0 0 0 0 1.0 9.0
腐敗率 0 0 0 6.0 12.0 12.0
15krad 発芽率 0 0 0 0 1.0 15.0
腐敗率 0 0 0 1.0 7.0 16.0
 

みかん
「貫通力の高いガンマー線では50krad(500グレイ)以上の照射で果肉に異臭が発生し、食用としての価値が低下する。そこで、本研究では貫通力の弱い電子線を用いて温州みかんの表面殺菌を行い、食味および成分に変化を与えないで貯蔵性を高める方法について検討した。」 「ミカン果皮の褐変化と電子線エネルギーとの間に相関が見られ(中略)従って、褐変化を抑制するためには電子線のエネルギーが低いほうが望ましく、事実上0.2MeVの場合には非照射試料と変わらない。しかし、カビ抑制効果についてみると、0.2 MeVよりも0.5 MeVの方が有効である。0.2 MeVでは電子線の飛程が小さく、果皮表面から約0.4mmの深さまで照射されるにすぎないが、0.5 MeVではほぼ果皮全体に電子線が吸収されていることになり、表面より0.4mm以上深い部分に存在するカビに対しても有効である。一方0.9 MeVや1.5 MeVで照射した場合には0.5 MeVよりも逆にカビの発生が増加した。このような高エネルギーでカビの発生が増加した原因は、果皮部の吸収線量が増大したため果皮での組織変化が大きくなり、カビ寄生に対する抵抗力が低下した結果、生き残ったカビや二次的に汚染したカビの生育が起こりやすくなったためと考えられる。(中略)0.5 MeVが最適であり、高いビーム電流を用いて表面線量200krad照射することが望ましい。この照射条件下では青カビや緑カビは殺菌され、果皮の褐変化などの品質低下もかなり抑制される。また、3℃前後の低温貯蔵と組み合わせれば3ヶ月以上の長期貯蔵が可能である」 「ハイイロカビは放射線抵抗性は最も大きくD1050−70krad、150kradでも完全殺菌はやや困難であるように思われる」

馬鈴薯
「照射処理した馬鈴薯から二次加工した製品(ポテトチップス)を製造した。官能検査の評点は、非照射区のほうがすぐれていたが、7krad(70グレイ)区と15krad(150グレイ)区間には明らかな差異は認められなかった」「色は未処理区のほうがより高く、揚がり具合、総合でも同様な傾向が見られたが、これは照射区のポテトチップス表面にこげ具合のむらが目立ったためと思われる。照射された馬鈴薯では還元糖量の分布が不均一で、中心部の濃度は周囲より高いがそれが原因であろう」「今回ポテトチップス製造に供したイモは照射後約5ヶ月経過しており、常温貯蔵、5℃貯蔵ともに照射区のほうが還元糖量少なかった」 「現在の生産量は1万3−4千トン、最高で1万5千トンぐらい、流通は6−7千トンぐらい。いいものだけを出し後は廃棄している。品質のいいものはそれくらいしか確保できない(農林水産省大臣官房審議官談話 サンデープロジェクト1991年当時)」

かまぼこ
「500krad以上の線量は色調の変化(褐変)を認め400krad以上の照射には異臭(照射臭)の発生を認めた。300kradが適正量との結論を得た」「非照射は8種類の菌が検出された。100kradでも8種類、300kradでは2種類(Corynebacterium、Bacillus)に減少、500kradでは1種類(Bacillus)のみとなった。」「300kradの線量を照射した後、10℃程度で貯蔵することにより、非照射かまぼこ類と較べ貯蔵期間が2−3倍程度延長される」「室温(20℃)貯蔵では生菌数の面からみて3日後までは照射効果もあったっが、5日後には商品価値はなくなった」「板をあらかじめ照射した場合、20℃で貯蔵すると3日間はその効果がみとめられた。5℃貯蔵では2週間まで効果があらわれた」

ウインナーソーセージ
「0.5Mrad(5000グレイ)で10℃以下に冷蔵することによりきわめて効果的に保存性を高めることが認められた。照射直後の生菌数は103/g以下に減り、生き残る菌種は限定され、Floraも単純となり、無照射に対しネト発生までの期間を2−3倍延長することができた」「3日間までは色沢の劣化は認められないが、微かに照射臭が認められた。しかし、7日目ぐらいになると、照射ソーセージは退色を示し、色沢の劣化が認められたが、照射臭は少なくなり、注意しないとわからない程度であった。」「品質への影響は0.8Mrad(8000グレイ)以上になると肉色がやや淡くない照射臭を感じたが、1.0Mrad(10000グレイ)でも商品価値を落とすほどではなかった。ただし、amaranth(赤色2号)は0.8Mradでやや変色し1.0Mradは桃色になった」「MicrococcusやSerratia、Brevibakuterium、Pseudomonas、StreptococcusやLactobacillusなど乳酸菌やMA菌、酵母菌などは放射線に対し抵抗性が強い」」



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