日本の輸入農産品を「非関税障壁」としない申し入れ

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May  20, 2025

アメリカ合衆国保健福祉長官
ロバート・フランシス・ケネディ,Jr.様
    


日本の輸入農産品を「非関税障壁」としない申し入れ


 日本は輸入農産物の収穫後農薬や牛肉の危険部位除去や生ジャガイモの通年輸入を、日本の消費者を危険から守るために規則を設けている。この規則を「非関税障壁」とする米通商代表部の報告に日本の市民・消費者団体・生活協同組合・農民団体は異議を申し立てる。

T.米国産オレンジやレモンの表示について
2024年、米通商代表部報告書によれば、日本は収穫後に使う殺菌剤は食品添加物に指定し表示を義務付けている。
日本に輸出される米国産農産物は収穫後に殺菌剤を使用しているためラベル表示が義務付けられている。米国産農産物は殺菌剤の表示があるため日本の消費者に誤った印象を与え、米国産農産物に不利な影響を与える可能性があり、これが非関税障壁になる。

反論
日本の消費者は表示が非関税障壁という指摘が間違っていると申し入れる。
今回、照射食品反対連絡会は米国産の柑橘類を調べた。
その結果、オレンジには6種類の殺菌剤が記載されていた(写真1)。
また、米国生産者に殺菌剤の使用を控えるように働きかけたネーブルオレンジはTBZとイマザリルの2種類で販売されていた(写真2)。
米国産レモンには3種類の殺菌剤が記載されていた(写真3)。国産のレモンには殺菌剤の使用はない(写真4)。
現在も国内では殺菌剤を減らした輸入かんきつ類の輸入努力が続けられている。日本の消費者は農薬を減らす生産者の努力を評価している。

米通商代表部報告書はこうした農薬を減らす努力もなく表示が非関税障壁になっていると断定している。このような防カビ剤を減らす努力もなく非関税障壁と決めつける決定に日本の消費者は反対する。
日本の消費者は米国政府と日本政府で行われている交渉で、「殺菌剤」や「防カビ剤」の一括表示に変えることを心配している。このような表示に変更されたとき、日本の消費者は不買で対応する。
日本の消費者の特に米国の柑橘類生産者と米通商代表部が柑橘類の農薬減について真剣に検討されることを要請する。

写真1
Imazalil、Thiabendazole (TBZ)、Azoxystrobin、Fludioxonil、Propiconazole、:pyrimethanil



写真2
Thiabendazole (TBZ)、Imazalil、



写真3
Thiabendazole (TBZ)、Imazalil、Fludioxonil、



写真4




経過(防カビ剤の増加した理由は外圧)
1971年にレモンやグレープフルーツの輸入自由化が行われた。当時、アメリカ政府は3種類のカビ防止農薬(ビフェニール、OPP、TBZ)の許可を求めた。日本は農薬を食品に添加することは禁止されていた。しかし、アメリカの圧力でビフェニールを食品添加物として認めた。しかし、米国の業者はOPPとTBZを違法承知で使ってきた(1975年)。この違反は日本で大きな社会問題になった。米国は「太平洋をトムコリンズにする気か」と、当時のモンデール副大統領を日本に送り、使用を認めるように申し入れた経過がある。
当時の福田首相はこの圧力に3種類の農薬を食品添加物として許可した。当然食品添加物なので表示が義務付けられた。
日本の消費者はOPPが膀胱がんや遺伝毒性の報告があり反対運動を行ってきた。今回、増え続ける防かび剤の表示が非関税障壁というのは米国政府や米国ポテト協会の殺菌剤を増やせという使用拡大の結果である。今回の表示が非関税障壁になっているという一方的な指摘は不当な要求であると日本の消費者は結論した。
また、防カビ剤の種類には総量規制がないため日本の消費者は許可数が増えれば多くの化学物質を摂取し危険を負担することに大きな不安を持っている。

U.生食用ジャガイモの通年輸入問題
2024年、米通商代表部報告書によれば、米国産ジャガイモの対日輸出は、チップス加工用ジャガイモに限られている。米国は2020年3月、食用ジャガイモの市場アクセスについて日本に正式な要請を行い、2023年9月、日本は食用ジャガイモの最終的な害虫リストを提出、2024年9月の植物防疫に関する二国間協議において、日本は米国に対し、害虫リスク評価の完了に向けて進捗していることを伝えた。長い期間をかけ生ジャガイモの通年輸入を準備し日本と条件が整いつつあることを記している。
日本の消費者は米国政府と日本政府が行っている、生食用ジャガイモの通年輸入解禁に反対する。現時点で生食用ジャガイモは国内産で足りている。チップス用ジャガイモは期間を区切った輸入と冷凍チップスの輸入がすでに解禁されている。日本の消費者は生ジャガイモが種イモとして使われ、ジャガイモシロシスト線虫やウイルス病が国内に拡大する危険を問題にしている。
また、日本政府は米国の要請を受けて、ジャガイモの防カビ農薬「ジフェノコナゾール(殺菌剤)」を認めるとしているが、ジフェノコナゾールは動物実験で肝がんや白内障や神経毒性が指摘されている。
日本政府は一日摂取許容量(ADI)の0.25ppmを16倍もオーバーする4ppmを認めるという。この4ppmを日本の消費者は認めない、日本の消費者はこの非科学的な基準値に反対する。

V.牛肉の海綿状脳症の危険部位削除が非関税障壁とする問題
牛肉の危険部位除去(狂牛病プリオン)は日本の消費者が輸入牛肉の消費に安心感を持つ重要な検査である。この危険部位除去が非関税障壁になるとする米通商代表部の報告書に日本の消費者は米国産の牛肉輸入に不信感を持つ。日本で輸入牛肉を大量に消費する牛丼チェーン店などに日本の消費者は安全を守るように働きかける運動を行う。

W.日本の消費者は日本政府と異なる理由でコメの輸入に反対する
日本のコメ政策に米国通商代表部報告書は「日本のコメの輸入・流通制度は、規制が厳しく透明性が低いため、米国輸出業者が日本の消費者に実質的なアクセスを持つことが制限されている。」と指摘し、非関税障壁とした。この指摘は日本のコメ政策の矛盾を指摘している。しかし、日本の消費者の立場とは異なる。
日本の消費者は自国で食料を自給することが国民の生存を守る基盤であると考えている。現在の世界で起きている侵略戦争や武力による紛争が連鎖的に広がり、紛争国の国民は生きるための食料すら確保できない状態に追い込まれている。この状況に、日本の消費者は生きるための食料の自給すらできていないことを思い知らされている。
日本にとってコメは数千年の時間をかけて作り上げてきた生産体系である。しかし、太平洋戦争後、日本はアメリカからの食料輸入に頼ることになった。食料需給率は低下したが、日本人の主食であるコメだけは自給を続ける努力がされてきた。こうした社会的背景を無視して一般の食材と同じ位置付けで今回の米通商代表部報告書の内容を日本の消費者は受け入れられない。
今回のトランプ大統領の相互関税に対する決定は日本の社会体制が脆弱であったか日本の消費者は思い知らされた。あまりにも早いスピードで変化を迫る米国の動きに日本の消費者は自分たちの生存を守るために運動を起こさざるを得ません。そうしないために相互の協力により話し合いを進めるよう要請する。

射食品反対連絡会
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1-9-19-207
日本消費者連盟気付

Tel:03-5155-4765/Fax:03-5155-4767
Eメール:sshrk09@gmail.com

照射食品反対連絡会:2006年に54団体と個人で結成.
(主婦連合会、日本消費者連盟、食の安全・監視市民委員会、東京都地域婦人団体連盟、日本有機農業研究会、食品照射ネットワーク、健康情報研究センター、生活協同組合パルシステム東京、全日本農民組合連合会など個人で活動)


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