照射食品を推進しする皆さんここが間違っています

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食のコミュ二ケーション円卓会議
市川 まりこ 様
    

照射食品反対連絡会
代表世話人和田 正江(主婦連合会)
纐纈 美千世(日本消費者連盟)
里見 宏 (食品照射ネットワーク)
久保田 裕子(日本有機農業研究会)


照射食品を推進しする皆さんここが間違っています


 前略 
 集会案内の日時等拝見しました。しかし、討論内容がわからないため「食品照射記事(2017年12月10日)公開質問状について」を参考に検討させていただきました。

 まず、照射食品反対連絡会は、放射線照射で変化した食品成分の安全性を問題にしています。また、照射食品が消費者にメリットがあるかを問題にしています。
 現在、照射食品の危険を示すデータがあり、まだ未解明な部分も残っています。メリットとされるものは一部の人々に偏り、消費者の益とされるものも消費者から見ればメリットではありません。また、放射線による食品処理技術は未確定な部分があり安全が証明されておりません。現在、食品の処理技術は経験に基づいたいろいろな方法があり、私たちは放射線による処理を必要としていません。個々の問題を検討した結果、照射食品は危険であり、安全と言えず、消費者にメリットがないという結論に至っております。

 さて、市川さんも照射により成分の変化があるということは認めていますが、その論旨は適切な照射で色や臭や栄養素の変化を抑えれば食品として認めるという立場をとっておられます。
 市川さんが言う色や香や栄養素については、照射食品の研究が始まった40年以上も前から重要な問題とされていました。照射するとき冷凍したり、窒素充填したり、線量を下げたりいろいろな実験がなされました。臭いや色や栄養素の変化は商品の価値を落とすからです。でも、変色や臭いや栄養素の変化を抑えると殺菌ができないなど相反するものでした。
 この照射による変化を抑える研究は安全性を証明するものではありません。市川さんはそれを承知で「適正な照射なら大丈夫」と発言されているなら問題になります。再検討してください。
 私たちが照射食品に反対する理由はいくつかあります。
 まず「放射線照射による馬鈴薯の発芽防止に関する研究成果報告書」で「照射馬鈴薯によると考えられる所見としてラットの3万ラド及び6万ラドの照射馬鈴薯添加飼料を与えた雌の体重増加の割合が少なく、6万ラドの照射馬鈴薯添加資料を与えた雌の卵巣重量に変化が認められた。これが照射馬鈴薯摂取によると考えられる所見である。」と、たった300グレイ(3万ラド)、600グレイ(6万ラド)で異常があったという報告です。安全の証明どころか危険を示す報告でした。
 しかし、1977年のFAO,IAEA,WHOの合同専門家会議のテクニカルレポート604に次のように報告されました。
 照射ジャガイモについては「ひとつの長期研究で、卵巣の大きさに統計的に有意な変化が見られたが、組織病理学的な異常所見は見られなかった。」となっております。しかし、この実験で卵巣の重量は3分の1も減少しており、組織病理学的に異常がないなら、3分の1も重量が減少した説明が必要ですが、その説明はされていません。生殖器という重要な器官の異常は重大な危険を示していると考えます。
 また、続いて許可されることになっていた照射タマネギでも「放射線照射による玉ねぎの発芽防止に関する研究成果報告書」に、「300グレイ照射したタマネギを飼料に4%添加したところ、F3世代までの催奇形性実験で、肋軟骨癒合、頸肋があり、卵巣・睾丸の重量も減少した。
 再実験では線量も添加量も半分にされました。その結果、頸肋の増加が2世代目から確認されました。このタマネギの異常も卵巣および睾丸の重さに統計的に有意な変化が見られましたが、組織病理学的な異常所見や生殖への悪影響は見られなかった。従って、これら器官の重量の変化は人間の健康に重大な影響を与えるとは見なされなかったと報告されました。
 ただし、今後行われるラットを使った長期研究では、卵巣および睾丸の変化に特に注意する必要がある。」と記されたのです。
 再実験でも病理組織検査では奇形を否定できないにもかかわらず、そのまとめ部分で多くの異常が打ち消されたのです。こうした非科学的な説明に消費者は疑問を持ち、説明を求めたのです。
 しかし、この1977年の異常を否定した報告を受け、1980年、FAO,IAEA,WHOの合同専門家会議で「10キログレイまでの照射を受け入れる」と報告しました。  そこでは、この10キログレイを認めた科学的な根拠は示されず、言い訳のように、照射で出来る物質の毒性を調べよとか、栄養的な損失の検討とか、揮発成分の毒性や、過酸化物の研究などを行うよう条件を付けたのです。
 このWHOの報告を否定したのが日本で起きた照射ベビーフード事件(1978年)です。照射ベビーフード事件を起こした企業はWHO合同専門家会議の10キログレイまでは安全という報告を盾に、ベビーフードへの照射は危険でなく不可罰であると主張しました。
 裁判官はWHO専門家会議の審議過程も精査した上で、「重要な実験データが未公刊のデータにより裏付けられていて追試確認が困難である」「新しい試験結果が出される毎に再評価されることになっておりその意味では絶対的、最終的なものでない」など問題を指摘し、WHOの結論に論理的飛躍があるとしたのです。
 その後、2002年には、検知法の成分として照射による特異的成分とされたアルキルシクロブタノン類がラウル氏らの実験で発がん促進作用を示すことがあきらかになりました。
 この報告が1980年の合同専門家会議の「10キログレイ」を根底から覆したのです。
 アルキルシクロブタノン類は慢性毒性、発がん性実験もされず、照射食品はその安全性を議論できない状態になっています。

 また、2010年5月18日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品規格部会は照射により生成するアルキルシクロブタノン類について、科学的知見が不足しているので資料の追加を通知しています。しかし、8年も経つのに科学的な資料は提出されていません。
 市川さんのアルキルシクロブタノン類について「食品としてどれくらいのリスクが増えたのか、増えたリスクは他のリスクと比べてどの程度のものなのかを理解した上で考えてみると、無視しても良いレベルだとわかります」と書かれていますが、市川さんが理解するために必要だと思ったデータを厚労省は求めているのです。このデータはいまだに厚労省に提出されていません。

 もうひとつ、市川さんが本当の専門家といわれる人が、和光堂の照射ベビーフード事件を起こすきっかけを作ったのです。日本原子力研究所高崎研究所食品照射開発試験室長が和光堂の下請け会社をラジエ工業に紹介したことでベビーフードの違法照射が始まったのです。
 赤ちゃんに影響が及ぶ違法事件で消費者は照射食品の専門家という人を信頼できなくなり、照射食品にも大きな疑問を持ったのです。
 それどころか、現在も違法照射された食品が日本に輸入されています。これは推進される方々に法令遵守という発想がないからではないでしょうか。照射食品は臭いや色という見た目の変化を抑えて、見た目がわからないようにすればよいという、まさに市川さんが書いておられる考え方が根底にあるようです。
 また、当会は放射線源が照射をする一部の人によって管理され、消費者がチェックできないという異常な食品処理技術ということを問題にしています。
 このように多くの問題を持つ食品処理技術を当会は認めないという立場を取らざるを得ないのです。
 最後に、市川さんの書かれた文書に「今回の公開質問状に名前を連ねている人たちは、私たち食のコミュ二ケーション円卓会議の公開講座・公開討論会のような公開の場には姿を見せず、食品照射研究協議会のような本当の専門家に対して論戦を挑むこともなく、その代わり、食品照射にあまり詳しくない企業や団体にこのような公開質問状を送りつけて恫喝し、その弱気な反応をさらに彼らの一方的な主張を押し付ける宣伝に利用するということを繰り返しています。」と書かれています。
 色や臭いで安全を言う市川さんと、科学的根拠を求める当会とでは議論がかみ合わないことが明確になりました。また、私たちの反対運動を「恫喝」と決めつけられていますが、この「恫喝」という表現は名誉毀損にあたることを申し添えておきます。

 以上申し上げましたように、科学的な根拠に基づいた話し合いにならない討論会への参加はできないという結論に至りました。よって円卓会議への参加は遠慮させていただきます。
 しかし、折角の機会ですから、お知らせいたしますが、照射食品反対連絡会も国会内での院内集会を計画しております。
 院内集会は国会議員、関係各省担当者、関係団体、消費者が一同に会し話し合いをする場となっております。この会はどなたでも参加できますことを申し添えます。

草々


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