輸入漢方生薬原料への放射線照射について

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2018年3月3日

日本漢方生薬製剤協会
会長 加藤 照和 様
    

照射食品反対連絡会
代表世話人和田 正江(主婦連合会)
纐纈 美千世(日本消費者連盟)
里見 宏 (食品照射ネットワーク)
久保田 裕子(日本有機農業研究会)


輸入漢方生薬原料への放射線照射について


 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

 私たちは食品に放射線を照射して殺菌・殺虫・発芽防止を行うことに反対している市民団体です(消費者団体54及び個人)。

 日本では食品への放射線照射(以後照射)は食品衛生法で禁じられています。しかし、日本原子力委員会は「原子力の平和利用」と謳い食品への照射を推進してきました。そして、候補となった7品目のうち、最初にジャガイモが許可されました(1972年)。しかし、残り6品目については照射タマネギの実験で骨の奇形などが出たため実験項目が追加され、その後新しい許可はされていません。しかし、世界はジャガイモが許可されたことを拡大解釈し、ジャガイモ以外の食品にも照射した食品を輸出してきました。
 農薬による殺菌や殺虫と違い、照射を確認する検査法がなく問題は根深いものになりました。しかし、簡易検査ができるようになり違法食品が発見されるようになりました。
 その結果、違法な照射食品は中国から多く輸入されている実態が浮かび上がりました。(中国からの違反事例:粉末田七人参、蜜蜂の幼虫粉末、アガリクスタブレット、朝鮮人参ドリンクなど)

 中国にはコバルトの照射施設が103ヶ所、電子線照射施設が6箇所あると報告されています(2008年)。そして、より高価な材料に照射することで利益をあげているようです。
 当会は、健康食品の材料に多く照射されていることから、輸入される漢方薬の原料にも照射されていないか危惧しています。以前「中国から漢方薬の原料を輸入しているが、放射線が照射されていないか確認する方法がないか」と訪ねてこられた会社もありました。
 貴協会は輸入原料の残留農薬に機敏に対応されていることから、放射線照射にも対応策がとられ、また、会員各社への注意喚起も行われていることと思います。
 しかし、中国の照射施設は採算をとるため、広範なものに照射しています。残念ながら、日本の検疫で照射についての検査は食品のみで他については行われていません。
 日本の消費者は人間に優しい薬として漢方を選択している人も多く、安全は確保されていると信じています。そこで、漢方生薬原料の照射について、私たちの疑問を列記しました。貴協会の現状での対応、対策、考え方をお教えねがえれば幸いです。また、文書のやり取りだけでは齟齬が生じる恐れもあります。貴協会と情報交換の場を何からの形で持ちたいと思っておりますが、いかでしょうか。
なお、まことに恐縮ですが、回答を3月16日までにいただけますようお願いいたします。

●質問
1.放射線利用技術データベース(生薬およびハーブの放射線殺菌)に「生薬は多いもので1g当たり100万個以上の微生物で汚染されている」と記載された資料があります。漢方生薬の原材料は微生物汚染が高いということでしょうか。

http://www.rada.or.jp/database/home4/normal/ht-docs/member/synopsis/020004.html

2.現在、生薬原料の殺菌はどのような方法を使っていますか。

3.中国で加工された漢方生薬原料が照射されないように対策は取られていますか。

4.輸入した生薬原料が照射されていないか検査をしたことがありますか。ある場合は結果についてもお知らせ下さい。

5.照射食品に関する情報を収集していますか。

6.中国の照射に関する情報を収集していますか。

7.会員会社より照射をしたいという相談を受けたことがありますか。

  以上


[連絡先・回答先] 照射食品反対連絡会
169-0051 新宿区西早稲田1-9-19  アーバンヒルズ早稲田207号
日本消費者連盟内
電話 03-5155-4765  メール sshrk09@gmail.com


資料
問題の概要

 私たちが放射線食品照射に反対する主な理由は下記のとおりです。
●誘導放射能に関して、照射された食品に「誘導放射能は生じない」と関係研究者は否定していた。しかし、厚労省の国立医薬品食品衛生研究所が、アメリカ軍の機密文書等を調査し、照射食品は条件により誘導放射能を帯びることを明らかにした。アメリカ陸軍に許可された照射食品は禁止され、軍は照射食品の研究を停止した。この問題はまだ解明されていない。
(「X線並びにγ線を照射した食品に生じる誘導放射能」http://www.nihs.go.jp/library/eikenhoukoku/2007/107-118.pdf)。●2002年、フランス・パスツール大学のラウルらは放射線照射により生成されるアルキルシクロブタノン類を投与した動物実験で、発がん促進作用があることを報告した。
Raul, F. et al. Food-borne radiolytic compounds (2-alkylcyclobutanones) may promote experimental colon carcinogenesis. Nutr. Cancer. 44 (2), 88-191.2002

  これらの知見を踏まえて、厚生労働省は衛生審議会食品規格部会を開催し、下記のように結論し、スパイスへの照射を要請する原子力委員会とスパイス協会にデータの報告を通知した。

(1)食品健康影響評価に必要な科学的知見として
 @各照射食品中のアルキルシクロブタノンの生成量及びその推定曝露量
 Aアルキルシクロブタノンの毒性(特に遺伝毒性、発ガンプロモーション作用)の情報データが不足しているので追加すること。

(2)食品(特に、香辛料)への放射線照射のニーズは、一部にニーズがあるが、有用性が確認されていないこと、消費者の理解が得られることが前提であること。

(3)食品への放射線照射に関する消費者の理解を得ること。

 厚生労働省の提出要請したデータは原子力委員会、スパイス協会から提出されていない。また、厚生労働省は「スパイス業界から殺菌の方法はいろいろあり放射線照射は必要ない」という聞き取りも行っている。

  ●2012年7月、牛レバ刺しが禁止になり、一部焼肉業者等より放射線で殺菌したい旨が厚労省に申し入れられた。厚生労働省は「畜産食品の安全性確保に関する研究」を3ヵ年続けた。(平成25・26・27年度)

 この研究結果は放射線照射によって、量反応関係のあるアルキルシクロブタノン類の増加、トランス脂肪酸の生成、過酸化物の増加などを報告している。誘導放射能について実験はされていない。

  【食品照射の許可に反対する主な理由】
1.放射線照射食品は人の健康を損なうおそれがある。
2.放射線照射食品については慢性毒性、発がん性実験、催奇形性実験などの重要なものが行われていない。(重要なデータが不十分)
3.国際機関が10KGyまでの放射線照射は安全とした1980年の報告書は、その後誤りであることがわかった。(照射ベビーフード事件判決で、論理の飛躍が指摘されている)
4.放射線照射された食品から放射線が出る。(誘導放射能)
5.照射すると特有な臭いがし、食品の質が低下する。
6.放射線照射による発芽防止・熟度抑制は、見かけの鮮度だけよくみえる。
7.放射線照射された食品の照射線量・回数を調べる方法(検知法)がない。
8.照射したかどうかの検知法も完成されていないので、照射食品を管理・監視できない。
9.照射前の不衛生な取り扱いも放射線照射で殺菌して隠せるので、照射ベビーフード事件のような悪用・乱用のおそれがある。
10.放射線食品照射で食中毒を防げるということには根拠がない。
11.スパイスでの食中毒はこれまでに一例も報告がない。(芥子レンコン中毒事件はカラシとは関係がない)
12.牛の生レバーの食中毒防止のための放射線照射試験研究は、3年以上かけて行われ、実用化はむずかしいことが明らかになっている。
13.放射線照射に頼らなくても、殺菌、殺虫、発芽防止など代替する方法がある。
14.食品照射で、世界の食料不足や飢えを救えるというのは机上の空論にすぎない。
15.放射線照射施設が多くできれば、被曝事故が起きる可能性が高くなる。
16.世界の多くの国が放射線照射食品から撤退している。認可する食品は多くても、実際に使用している品目は少ない。(ただし、中国は量も品目も多いようである。)
17.米国で照射ひき肉は消費者に受け入れられなかった。アメリカ、ヨーロッパ諸国、オーストラリア、ニュージーランドなど、世界各国で照射食品に消費者が反対している。
18.日本では照射食品のニーズはほとんどなく、照射を認める緊急性も必要性もない。

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