ビタミンE(トコフェロール)

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  褐色のビンに入れてある薬品は光に弱い性質があるからです。透明なビンだとアッというまに分解して効果がなくなってしまいます。でも、多くの人は分解を防ぐために褐色のビンに入れているなんて知りません。褐色のビンやアンプルに入っていると何となく良く効く薬と感じる人も多いようです。それを逆用して褐色のビンに入れてクスリまがいの感じをだして商売している健康志向型清涼飲料が多くあります。こうした商品を東京都の消費者センターが39種類について分析しています。分解して少なくなっているものも多かったのですが、ビタミンEと表示がしてあってまったく成分が検出されなかった2品目がアルギンZ(味の素)とアルギンスーパーX(味の素に吸収されたカルピス食品工業)でした。
 1922年、エバンスとヴィショップはそれまでに知られていたビタミンを全部調合したエサで雌のネズミを飼育する実験を行なっていました。全てのネズミは順調に育っていきました。しかし、いよいよ子供を産ませるだんになって、どのネズミも妊娠しないという欠陥があることが判ったのです。これは育てたエサに欠陥があったに違いないということで、彼らは不妊ネズミにレタスを与えてみました。すると今まで妊娠しなかったネズミが子供をつくれるようになったのです。このレタスの中の妊娠に関係する未知の物質にギリシャ語の”子供を産む”という意味の「トコス」と”力を与える”という意味の「フェロール」を一緒にした「トコフェロール」という名前がつけられました。このトコフェロールがビタミンEと呼ばれるものです。
 このビタミンEは脂溶性ビタミンといってビタミンAやDと同じように脂に溶けやすい性質をもっています。ですから人間がたくさん摂ると脂肪に蓄積し過剰症を起こすこともあります。最近の研究から、ビタミンEは慢性の吸収障害を伴う患者で、長期の療養中におきる歩行障害などの筋力低下や運動機能失調、眼筋麻痺、感覚障害などの神経症状に関係があると注目されています。また、脳卒中の患者にビタミンEを投与すると脳の腫れや壊死が抑制されるとか、狭心症の患者に長期間投与すると効果があるとか、ホルモン臓器に良いとか、免疫力を増すことができるとか、コレステロールを下げることができるとか、癌を防げる、老化予防に効果があるとか、まるで万病に効く特効薬みたいなことがいわれています。しかし、まだ仮説の域を出ないものが多いのです。仮説の段階で幻想を売るのが商売です。ここにいたってビタミンEは健康産業のヒット商品となったのです。また、このビタミンEは酸化防止効果があることから多くの加工食品に酸化防止剤としても使われています。わざわざ買って飲む必要はありません。私たちのまわりには薬としてのビタミンE、食品添加物としてのビタミンE、健康食品としてのビタミンEがあふれています。 ここで問題になるのがビタミンEの過剰症です。血栓性静脈炎、肺塞栓、高血圧、易疲労性、乳房腫瘍、性器出血、頭痛、下痢、視力障害、低血糖症、口内炎、糖尿病の悪化、狭心症の悪化、生殖機能障害などが挙げられています。また、現在市販されているビタミンE剤の副作用として、胃部不快感、下痢、便秘等の症状、発疹が注意されています。でも、アルギンZやスーパーXは表示してあっても検出もされないのですから過剰症を心配する必要はありません。それどころか他の成分もほとんどないのですから、不当表示のうえに益はなしです。味の素(株)の言い分けが楽しみです。スーパーXなどはたった50ミリリットルで300円もするのですから泥棒みたいな話です。

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