ビタミンCの過剰摂取

lin_067.gif (542 バイト)


  17世紀、インドを植民地にしていたイギリスは喜望峰をまわって、往復するのに約1年を要したといいます。この航海中に下級船員に、唾液がでなくなり、歯茎が腫れ、目が乾燥し、皮膚に青アザのような出血を起こす者が多くでました。この病気が「壊血病」です。1774年、海軍軍医だったジェームス・リンドは、高級船員は果物や野菜を食べているが、下級船員は保存の難しい野菜や果物はほとんど食べていないことに気がつき、さっそく、オレンジやレモンをジュースにして船に積み込んでみたのです。思ったとおり壊血病は果物ジュースで簡単に解決したのです。そのため、なぜ果物や野菜で壊血病が治るのか研究はされなかったのです。ようやく1920年になって不足すると壊血病になる物質に「ビタミンC」という名前がつけられました。
 現在、日本人は食事からビタミンCを1日130ミリグラム以上摂っています。この量は栄養所要量の約3倍です。十分摂っていますから壊血病はありません。それどころか、これ以外に酸化防止剤として、アジの開きから駅弁までビタミンCは大量に添加されています。すでに日本人はビタミンC漬けです。でも、これでもかと健康志向飲料にビタミンCが添加されています。なぜ、こうビタミンCがあふれているのでしょうか。
 1970年、ポーリングというノーベル賞を2回ももらった科学者が「ビタミンCを大量に飲めば風邪に効く」と言い出したのです。この発表は「みかん」は風邪に効くという言い伝えがあった日本人には大変受け入れやすいものでした。でも、ポーリングのいう大量療法というのは、風邪の引きはじめに1時間ごとに500ミリグラムずつ飲めば予防になるというものです。これは1時間ごとにみかんを15個以上食べないといけないのです。この説は各国で試されましたが、効果はないと言うことになっています。
 もうひとつ、ビタミンCはガンに効くという話があります。これは、1977年に、健康人に「西洋食」「野菜食(ベジタリアンの食事)」「日本食」を食べさせて、排泄した便の「突然変異原性」を調べたら洋食グループの便が1番強い変異原性を示した。しかし、1日4グラムのビタミンCを与えたら、その変異原性が60%以下に抑えられたというのです。変異原性と発ガンには密接な関係があります。変異原性が減るならガン予防になるというのです。実際にガン患者に大量投与して寿命が延びたという報告もありますが、医者の予測より長生きしたというものです。これはあまりあてになりません。ガン患者を2群に分けて行なわれた実験ではビタミンCに効果はなかったと報告されています。
 ビタミンCは膀胱結石や腎臓結石ができる可能性が報告されています。さて、私たちが知っていてよいのは、ビタミンCは大量に飲んでも腸からは100ミリグラムほどまではよく吸収されるが、その後はどんどん吸収が悪くなることです。吸収できなかったビタミンCは腸に住む菌に分解されてしまうのです。ドリンク剤で大量に飲んでも思った通りにならないのです。

lin_063.gif (482 バイト)

b39_001.gif (494 バイト)