ドコサヘキサエン酸(DHA)・エイコサペンタエン酸(EPA)(上)

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  魚の目のところの脂肪を食べると頭がよくなるとマスコミでにぎわっています。これは魚に含まれる不飽和脂肪酸が脚光をあびているのです。具体的には魚の脂肪の成分になるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)です。効果は頭だけでなく成人病予防、老化防止、がん転移防止、アレルギー防止などたくさん挙げられています。でも、魚の不飽和脂肪酸が、肉の不飽和脂肪酸に代ってもてはやされるのはそれなりの研究があるからです。
 百年も前から、グリーンランドのエスキモーは血液が固まりにくいという報告があります。1970年代に、デンマークのデュエルベルグらはこの血の固まりにくい原因を調べれば、心筋梗塞や脳梗塞を予防できるのではないかと研究を始めました。その結果、魚やアザラシに多く含まれる不飽和脂肪酸は、陸の動物の不飽和脂肪酸と違って、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)で、それを多く食べているためだということががわかったのです。魚の不飽和脂肪酸は血液凝固を防ぐので、脳梗塞のように脳の細い血管に血液がつまる成人病の予防になるといわれ製薬会社も薬として開発しています。それどころか簡単に手にはいりますからすでに健康食品として市販もされています。しかし、本当にエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸を多く食べると身体によいと信じてよいのか問題が残っています。なぜなら、都会でコレステロールが高い人には予防になるかもしれません。しかし、グリーンランドのエスキモーはエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸をたくさん食べるために、大怪我をすると血が固まらないので出血多量で死ぬ人が多いのです。脳梗塞という病気から見ればエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸はよいのですが、怪我で出血した時は困ることになるのです。
 さて、まったく違う所で、違った視点からの研究もあります。1930年、コロンビア大学の産婦人科医だったP.クルズローは、人工受精させるために精液を子宮に送り込むと突然子宮が収縮して精液を押し返してしまったり、腹痛を訴える婦人がいることに気がつきました。これがきっかけで精液の中には子宮を収縮させる物質があることが発見されたのです。この物質がプロスタグランジンといわれるものです。(*メモ1)
 その後、スウェーデンのカロリンスカ研究所のサミュエルソン教授らは肉に含まれる不飽和脂肪酸であるアラキドン酸からプロスタグランジンが何種類も作られることを見つけました。このプロスタグランジンは微量で陣痛を起こすだけでなく、病気のときに熱を出したり痛みを起こしたりするなど多くの働きを持っていることがわかっています。最初のアラキドン酸から枝別れしながらいろいろなプロスタグランジンが作られていく様が滝のようにみえることからアラキドン酸カスケード(滝)と呼ばれています。
 この肉の不飽和脂肪酸であるアラキドン酸から作られるプロスタグランジンと魚の不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)から作られるプロスタグランジンの働きに違いがあるらしいことが解るのに時間はかかりませんでした。


*メモ1
 現在このプロスタグランジンは出産時の陣痛誘発・促進剤として医家向けに市販されています。しかし、陣痛が強く起きすぎて子宮が破裂したり、死産、仮死状態での分娩があって脳性マヒ、テンカンなどの重篤な傷害を起こすことがわかり、厚生省もこの薬の効能書きの改定を行ない「母体、胎児に対する安全性を十分に考慮し、分娩の進行に必要最少量にとどめること」と赤枠で囲って書くように指示しました。ちょっと前の話しですが、私の知りあいも、連休に産気づきそうなので予定日より早かったのですが陣痛促進剤を使われました。自然分娩より痛い思いをしたと話していました。医者の都合で使われては困りますね。

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