健康診断(下)[集団健診]

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 田舎で暮らしていた私の父親は肝臓の検査をしている途中で事故にあい亡くなってしまいました。本人も母も胆管の写真を撮るだけですからといわれて死ぬようなことが起きると思っていなかったようです。検査中に血圧が下がったので血圧を上げようと注射をしたら脳出血が起きたという説明でした。ある知人は、頭痛がするので病院に行ったら、脳の血管を撮影しましょうと言われてそのまま植物人間になり亡くなられました。病気の手術中ならまだしも検査で死んでしまってはたまりません。最近、検査中に事故が起きたという相談がかなりあります。実態は不明ですが問題の根は深そうです。
 さて、医者もこの病気だなと診断がついても、もっと情報があったほうがよいといって検査をします。検査は薬とならんで大きな収入源になるからです。この収入源をほっておく手はないと考える病院経営者がでてきます。自覚症状がある患者より自覚症状もない健康な人たちを相手にしたほうがもっと儲かるからです。受診した人も異常なしといわれて喜んで大金を払ってくれます。こういう背景があって「早期発見神話」が巷に広がって行きました。ガンで手術をしたが手後れで亡くなった。ガンは早期発見だ。といわれて集団健康診断が盛んになりました。私たちの中にも、ガンで死ぬ人がたくさんいるという情報はありますが、でも実際どのくらいの人がガン死んでいのかを知っている人は少ないのです。
 年代別にガン死亡率をグラフにしてみました。縦軸を100パーセントにとったのが図Aです。しかし、グラフの山が見えなくなってしまいますから、拡大したのが図Bです。3%は越しません。女性は男性に比べて死亡は半分ですから半分安心してください。10代、20代は交通事故の方が危険です。でも30代から死因のトップがガンになります。トップと言っても、30-34歳(人口は約800万人)でガンで死んだ実数は1,056人(1991年)です。2番目が自殺で999人ですからほぼいっしょです。40歳過ぎたらガン年齢といわれます。40-44歳で5,858人です。50-54歳で12,217人で1万人を越えます。このくらいになると心配になるのかも知れません。パーセントに直すと0.148%です。ガンも年齢が高くなると多くなります。
 うるさい、ごたごた言わずにどうすればいいのか書けという声が聞えてきそうです。 そこで健康診断の条件を整理してみました。
@患者がみつかったら治せる治療法があること(医者に聞いて、いろいろなケースがあるから一概に言えないというようなことをいわれたら、こんな無責任な医者の健診は受けないほうがよい。また、治せない病気を本人に断わらずに研究目的で調べている例があって問題になっている)
A治療を受けられる施設が近くにあること(治療できる病院が近くにないということがよくある。1−2度病院に通うがだんだんシンドクなり結果的には心配だけ増えてしまう)
B医療施設がその患者を引き受けられる状態にあること(患者が待っていてなかなか入院や治療が受けられないという実態がある)
C病気を発見することで本人に十分利益があること(病気を発見されて苦しんでいる人は多い。ちょっと違うかもしれないが、ハンセン氏病のように他の人たちのためになると「隔離」という不当な差別を続けている例が今もって解決されていない)
D早期に発見すれば、自覚症状がでてきてから治療した場合より明らかに治療効果があることが立証されていること(この点をクリアーできていない検診が問題になる)
E検査・検診の診断精度が高いこと
F受診者に負担が少ないこと(ときには死んでしまう検査もある)
G金銭的にも適当であること

 以上を満足していない健康診断はお金の無駄だと私は考えています。

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