「服役者が子どもだった頃を調査し、同じアンケートを子どもにも行なう。そして、服役者と同じ項目を選んだ子どもたちはいずれ刑務所に入る」といったらこんな馬鹿げた調査はないとすぐ気がつきます。しかし、これを健康問題に置き換えられると変だと思わないことがあるのです。
心筋梗塞や脳卒中は子どものときから始まっているという仮説があります。なぜなら、子どもの食事が洋風化してコレステロールが高くなっているからだというのです。
この研究をしたい医師と元気な子どもの血液の正常値を調べたい医師が学校を使って研究を始めたのです。父母、教員には予防健診ですと説明しましたから、誰も抵抗できないのです。多くの親が健診の承諾書をとられ、この健診が我が子のためになると思っていたのです。ところが検査の結果、異常とされた子どもや親は大変です。これで一生心配しながら生きていかなければなりません。
しかし、この健診にも父母から「健康な子どもから採血をするのはおかしい」とか「家族の病気まで細々聞いたりするのは家庭介入だ」いう疑問が出され始めました。こうした批判に「保護者から承諾書を取っている」とか、もっとすごいのは推進派の教授が「一部の変な親が反対しているだけ。嫌なら受けさせなくていいんだから。そのかわり自分の子どもが早く死んでもいいのなら」と話しています。
ある県では採血した血液で、ATL(成人T細胞白血病の略:大人になって白血病を起こすウイルスに感染している人が地域的にいる)の検査をして、結果を受取った学校側も「こんな検査項目は予定になかった(12名感染者がいた)。ショック!」と驚きを隠していません。こうした血液の目的外使用を平気でする体質も問題なのです。世界的にも議論されていて「小児期からの循環器疾患予防に関するWHO専門委員会報告書(一九九一)」では、予防の第一は、食事の改善、肥満防止、禁煙、運動習慣の改善としています。そして、子どもたちを誘惑する自動販売機やコマーシャルなどの社会的、環境的な問題を地域ぐるみで改善するのが先決としています。
アメリカの医学会でも、小児期のコレステロールを低下させれば心疾患などを減少させる証拠はないとしています。それどころか、今までに行なわれたコレステロールを下げるための食事療法やコレステロール低下薬を与えた延べ三〇、六九五名の研究でコレステロールを制限されたグループの方が他の病気で二〇%も多く死んでいるという報告しています。小児期のコレステロールスクリーニングには多くの未解決な問題があり、集団健診であれ、選択的健診であれ、莫大な費用の無駄と子どもたちに有意な障害をもたらすということで、小児期のコレステロールスクリーニングを「禁忌」であるとしています。日本の厚生省の研究班報告(一九九二)でも世界文献の検討が行なわれ、現在、成人の肥満を小児期に予測することは困難であり、小児期に計った血圧で何年か後の高血圧症を予測することもうまくできない。小児期の高脂血症が成人病の直接的原因になったことを証明する科学的データはないことなどを報告しています。厚生省も「小児成人病という病気はない。よって、ない病気の予防健診もない」としています。にもかかわらず、全国的に小児成人病予防健診が始められているのです。議員さんたちも気をつけてください。
この診断書をもらった親はびっくりして近所の医師に子供を連れていった。肥満でもないし、元気に学校にいっているのに、この子どもを診た医師も困ってしまい、「しばらく様子をみましょう」で終っている。
現在、子どもたちのコレステロール値は急に背が延びだす前には高くなり、その後また下がることがわかっている。このように成長にともなって上下変動するため、成長の違いを考慮しないで高コレステロールになっているというのは誤りであると指摘されている。
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