スイスでアメリカ輸入牛肉から使用禁止成長ホルモン剤DESが検出
<ロイター・CSPI等より>

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 スイス政府が昨年(1999年)7月、アメリカから輸入された牛肉から現在使用禁止となっている成長ホルモン剤ジエチルスティルベストロール(DES:diethylstilbestrol)を検出していたことが、2000年2月2日付けの米国ウォールストリートジャーナル紙上で報道されました。スイス政府により検査が行われた26件の米国産輸入牛肉検体のうち、2件の検体から成長ホルモン剤ジエチルスティルベストロール(DES)またはホルモン剤メレンジェストロール(melengestrol)が検出されたものです。スイス政府獣医薬局および公衆衛生局では昨年7月13日付けで米国政府にこのことを通達。現在、この2件の牛肉の製造元である2つの米国企業からの牛肉輸入を差し止めています。 同紙の報道により、米国農務省の管轄であるこうした違法ホルモン剤等の検査管理体制の有効性について米国内でも疑問の声が湧き起こっており、CSPI(米国市民のための科学センター:米国ワシントンDCを本拠地に栄養・食品の安全性等について活動している擁護団体)からは、今回の政府調査の結果を刑事訴訟の可能性も含めて法廷に提出するよう求める声が農務省に提出されています。 これに対し、農務省内にある食品安全性検査局の担当補佐官は、FDAと共同で調査を進めている旨を2月2日付けで発表しています。また、グリックマン米国農務省秘書官は、この件に関して厳密な調査および完全な調査報告の提出を求めていることを記者団に明らかにしています。

人への合成女性ホルモンとして使われていましたが、肉質が柔らかくなったり、牛乳の出がよくなるとして、1954年より農家で牛や羊などの家畜に使用されてきました。その後、このDESを飲んだ母親から生れた子どもが思春期になると膣ガンや他のガンを起こすことがわかり使用が禁止されました。このDESは今問題になっている環境ホルモンの最悪事故の例として紹介されているものです。 家畜の肉からも発見され米国食品医薬品局(FDA)が1979年、家畜における成長促進剤としてのDESの使用を禁止したものです。当時FDAでは、DESの人間に対する安全許容量は設定できないとし、全面的に使用禁止としました。また、農務省食品安全性検査局ではそれまで定期的に国内一般肉市場等で行っていたDES残留検査を、その後検出例がひとつもなかったことから、1991年に廃止しています。

一方、ホルモン剤メレンジェストロールは、米国内では使用が許可されていますが、スイスでは使用が禁止されています。 農務省食品安全性検査局では成長ホルモン剤使用牛肉の輸入を全面的に禁止しているEU諸国に向けて輸出される肉に対しては、その後も引き続き輸出前のDES残留検査を行ってきたとしていますが、これまでのところ残留事例は見つかっていません。しかし、今回残留が見つかったスイスはEUには含まれていません。

DESの残留が見つかった2件の牛肉の製造元である米国企業はFarmland National Beef
Packing社(以下Farmland社:カンサス州リベラル)とBruss社(イリノイ州シカゴ)。Bruss社は米国最大手の牛肉加工企業であるIBP社の子会社であり、このIBP社とFarmland社は米国内の二最大牛肉加工業者です。Farmland社は、現在USDAに全面的に協力し事情を調査中であるとしていますが、カンサス州リベラルにある自社施設で加工処理された牛肉ではないか、としています。同社では直接スイス・EUへの牛肉輸出は行っていませんが、問題となったBruss社に対して牛肉の販売を行っています。

こうした一連の騒動も手伝い、ホルモン剤の使用に対する疑惑を解消するため、米国農務省秘書官はEU担当官に対し、2000年春より牛肉のDES残留検査の再開を検討していることを伝えています。

この件については、今後調査状況等が明らかになり次第、また追って報告いたします。  

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