Q熱:低温殺菌で大丈夫 [ 編集部 ]

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 98年10月2日、朝日新聞に「肺炎などを起こすQ熱病原体低温殺菌牛乳の一部から検出」という見出しで記事がでました。よく読んでみると低温殺菌牛乳25検体のうち5本からQ熱の遺伝子が一部がみつかったというものです。何ヶ所から問い合せが来ました。別段心配する必要はないのですが、Q熱という聞き慣れない名前でパニックが起きているようです。遺伝子の一部が見つかったということは低温殺菌で菌体が壊されてバラバラになっているのです。殺菌がきちんと出来ているということです。ですから何も心配する必要はありません。酸性側(pH4.5以上)になると芽胞様になって熱に強くなることもあるのですが牛乳がpH4.5というような酸性になったときは飲みませんから心配入いらないのです。
低温殺菌が危ないならもっと早く異常が出ているはずです。こうした脅かしに乗らないようにしたいものです。 


【Q熱情報】

リケッチアによって起きる病気です。Q熱のQはQuery熱「わからない熱」の頭文字のQがつけられたものです。この原因がリケッチアであることがオーストラリアの研究者によってつきとめられました。
リッケチアというのはもともとダニなど節足動物の体内に寄生していたものです。このダニなどに咬みつかれたときに感染し急性の熱を伴った症状がでます。大きく4つに分けられています。チフス群、紅斑熱群、つつが虫病、Q熱です。本来日本で問題にされていたのはつつが虫と紅斑熱群のなかの1種類だったのです。Q熱は外国から食料を輸入しているので感染症が起きるかもしれないといわれていたものです。
Q熱の分布はヨーロッパから中近東、アフリカ、南北アメリカ、オーストラリアなど広い地域です。家畜、特に牛やヒツジに流産を起こすので問題になっています。また、食肉取扱業者の間では急性および慢性の症状を起こすことがあります。しかし、多くの人は感染しても発病しない不顕性感染です。症状はインフルエンザ似にていて、突然の高熱、頭痛、筋肉痛などで始り、高熱が1−2週間も続き、エックス線所見で肺炎像を呈することもある。ときには黄疸もおこり肝機能に異常を起こすこともあります。

アメリカのカリフォルニアの乳牛や肉牛には常在しているとされています。人への感染はこれに汚染した肉や牛乳です。また、塵埃中の病原体の吸込みとされます。潜伏期は2−4週間です。

人から人にはうつりません。問題は汚染された輸入畜産物が一番懸念されています。

【厚生省資料】

乳製品等から検出されたQ熱原因菌(コクシエラ菌)について 平成10年10月2日

 平成10年10月2日、乳製品等から検出されたQ熱原因菌に関する新聞報道等がありましたが、本件に関する情報については別紙のとおりであり、都道府県等に情報提供しましたのでお知らせします。
事務連絡
平成10年10月1日
  都道府県
各 政令市 乳肉衛生主管課 御中
  特別区

                        厚生省生活衛生局乳肉衛生課


チーズ、低温殺菌牛乳から検出されたQ熱原因菌(コクシエラ菌)について

 標記については別紙のとおりですので、参考までにお知らせします。
 つきましては、本事務連絡に基づき、消費者等に対して適切な情報の提供に努められますようお願いします。


(別 紙)

平成9年度厚生科学研究「Q熱リスクアナリシスに関する研究」の概要等

1 研究の目的等

 生乳等から検出されるCoxiella burnetiiについて、微生物学危害に関するリスクアナリシスを行い、必要な対策について、調査研究を行う。

2 研究の概要

(1) 種々のQ熱の診断法について、比較検討を行い、com 1遺伝子プライマーを用いたnested PCR法が感度が高い方法であったが、食品中のC.burnetiiの生存を確認するため、マウス等の実験動物を用いた病理学的診断が必要である。

(2) 今回調査したヒトの抗体保有率は、ヒト血清合計1320検体中32倍以上の抗体価を示したものは、10例(0.76%)であり、感染率は従来の他の報告に比して低い結果であった。既往歴から不顕性感染であったことがわかった。

(3) 乳等からのC.burnetiiの調査の結果、チーズ乳剤17検体中4検体、牛乳(殺菌条件:63℃,30分間)12検体中5検体から検出され、C.burnetiiが生存している可能性が示唆された。

3 研究のまとめ

(1) 乳等からC.burnetiiが検出されたが、ハイリスクグループと考えられる酪農家を含む血清学的調査でも抗体陽性率が従来の報告に比べ低かったこと、汚染菌量が低い可能性が示唆されていることを考え併せると、食品由来のC.burnetii感染の可能性が低いことが推測された。

(2) C.burnetiiの感染経路は、通常、経気道的と考えられているが、消化管を通じての感染はこれまで経口感染実験のデータがなく不明な点が多い。

(3) 以上のように、食品を経由したヒトのC.burnetiiのリスクは低いことが推測されたが、今後、より一層食品の汚染実態等を精密に調査する必要がある。

4 食品衛生上の考え方

(1) これまでの研究から、Q熱は、病原体を含む粉塵を吸入することにより、感染する例が最も多く、食品を経由したヒトのC.burnetii感染の可能性が低く、リスクも低いと考えられている。

(2) また、この問題は、我が国だけではなく、諸外国とも共通する問題であるが、我が国以上に乳・乳製品に長い歴史を有する欧州各国においても、チーズの原料に生乳の使用を認めている等食品衛生上、特段の措置を講じていないと承知している。

(3) これらのことから、現時点で直ちに食品衛生上の問題があるとは考えられないが、今後ともC.burnetiiと食品の安全性等に関する研究を推進し、この成果を踏まえて、必要な対策を講じることとしたい。


(参考)

1 Q熱とは、リケッチアの一種コクシエラ菌によって起こる人畜共通感染症で、世界中に広く分布しており、宿主域は、家畜、愛玩動物、野生動物、鳥類など極めて広い。

2 ヒトは病原体を含む粉塵を吸入することによって、感染する例が最も多いといわれている。

3 ヒトにおける症状と臨床経過は多種多様であるが、いわゆる風邪症状の症例がかなりの部分を占めていると推測される。通常の治療には、テトラサイクリン系の抗生物質が使用される。

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